専門医制度

当社顧問の菊池一久【医事評論家】による健康コラムです。

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2006/02/06

3.医師と患者(3)

〜専門医制度〜

医者側の不理解

専門医制度がある。

患者の立場から見れば有りがたいことだが、今一つ物足りない点がある。
厚生労働省は、2002年、一定の基準を満たした学会の専門医資格であれば、病院の看板や電話帳で広告できるよう制度を改正した。現在、41学会が広告を認められており、書者にとって専門医選びの目安の一つになっている。

しかし、専門医によるミスの続出や不正行為が発生し、この専門医制度は看板倒れではないかと、世間の批判をあびている。

それは、2000年、A医大総合医療センターで、抗がん剤の過剰投与による死亡事故。200ユ年には、T医大病院での心臓手術で患者が死亡し、病院側がカルテを改ざん、その手術チームのリーダーは、日本外科学会、日本胸部外科学会認定の専門医であった。
2002年には、B医科大学A病院の腹腔鏡手術ミスで男性患者が死亡。執刀医3人が、日本泌尿器科学会認定の専門医だった。
この事件は、手術ミスというより、まったく未熟きわまる医師たちの行為で、世間では「殺人」ではないかと報道され、大きな社会問題にまでなった。
さらに最近になって、C医科大学病院での手術による相次いだ医療事故による患者の死亡事故が明らかになり、医師は、心臓血管外科の専門医になのに、その執刀は、「基本的な知識や技術力が不足していた」と指摘された。
このようなことから、専門医制度が大きく揺らぎ、今日、厚労省は、処分医師(医療過誤など刑事事件を起こして業務停止などの処分を受けた医師に対して)への再教育義務化の法改正を行い実施するなど、対応がとられている。
医療行為には、不可効力の事故はあるものだが、これらは、それ以前のものであり、プロフエッションとしての根本的な医学教育、そのものに問題があるのではないかと、いわれている。そこには専門医制度のあり方が大きく問われているのだ……。

専門医とは

各学会が認定する専門医制度で、1963年に日本麻酔学会が創設したのがはじまりである。

「専門医」とか「認定医」とか呼ばれており、一段と専門性を習得し、その内容を深めたすぐれた技術力を持った医師たちへのある種の資格制度である。

厚労省研究班の調査によると、03年末には、これら専門医認定制度は計123学会で行われているという。

たとえば、日本呼吸器学会は、呼吸器専門医。日本消化器外科学会は消化器外科専門医。日本小児学会は小児科専門医。日本老年医学会は老年病専門医。日本胸部外科学会は心臓血管外科専門医。日本心臓血管外科学会は、心臓血管外科専門医。日本透析医学会は透析専門医というようになっている。

認定基準は学会ごとに違っているが、大半は指定の施設で3〜5年の実務経験を積んで、認定試験の受験資格が得られる。実技試験は少く、大半は、それら教育によって認定されているという。

専門医にかかるようにする

患者の立場からすれば、重大な病気になり、手術や化学療法を受けるときは、専門医を選んでかかることになる。それほど重大でなくても、検査を受けたり、相談をするときも専門医を選んでかかるようになる。

しかも、いくつかの種類の認定専門医であれば、その医師は、権威のある医師であり、その広告を見てかかることは、患者として自然のなりゆきになる。

しかし、これら専門医は、権威ある医師として認定された以上、それだけ思い責務を、患者に対して持つことになり、認定した学会も、大きな責任を持ったことにもなるのは当然のなりゆきになる。

先日、友人からの電話で、彼の知人が(男性、68歳)近くの病院で胸膜に水がたまっており、検査の結果、がん性といわれ、直ちに入院し、化学療法(抗がん剤による)が必要だといわれ、即入院したという。

がん専門病院に行こうと思ったが、とても混んでいるし、この病院に大学から専門医が週に1〜2日来るので、入院を決めたという。「専門医」がいるということで、すべてをおまかせしたという。詳しくは聞かなかったが、どうも肺がんらしいと、友人は言った。
さて、がんの主要治療法だが@手術によってがん病巣を除去する外科的治療。A放射線でがん病巣をたたく放射線療法。B抗がん剤でがん細胞を攻撃する化学療法等がある。
がんの治療には、これらいくつかの治療法を併せて行うこともある。
また、化学療法の主流は、複数の抗がん剤を組み合わせて活用し、その使用量を減らし、副作用の軽減をはかる多剤併用を行っているという。
失礼かもしれないが、入院した患者さんの担当医師が、抗がん剤に精通している優秀な専門医であればいいのだが、と心配になった。

抗がん剤治療の専門医はいるのか

先日、抗がん剤専門医に会った。

日本には、どのくらいの抗がん剤の専門医がいるのかとたずねてみたが、驚くべき答えが返ってきた。
およそ日本の人口の倍であるアメリカには、抗がん剤治療の専門医は4〜5000人いるが、日本では、白血病などの専門医である血液内科医を除けば、数10人しか抗がん剤の専門医はいないのではないかという。
そして多くは、抗ガン剤の新薬の治験に追われているという。

治験というのは、製薬会社が創薬の研究をし、この薬は、なんとかいけるのではないかというケースのとき、新薬となりうるかどうかの検査を厚労省に「治験」として提出、その許可を得て行うもので、その許可がおりれば、製薬会社は、病院、医師に治験を依頼する。詳しくは省略するが、第一相試験(臨床薬理試験)、第二相試験(探索的臨床試験)、第三相試験(検証的臨床試験)を行うのだが、抗がん剤の場合は、健康人に対しては有害なものが多いので、第二相試験から行い、用法、用量が決まれば承認申請できることになり、第三相試験は、市販後に行われる。

そこでどうしても抗がん剤専門医の手が必要となるのだ。

この抗がん剤によるがん治療の専門医制度については、内科系の日本臨床腫瘍学会の腫瘍内科と外科系の日本癌治療学会の二学会が、今年の秋に、認定試験を別々に実施することになっている。前に述べたように、抗がん剤は市販後も医師主導の臨床試験を通して標準治療の改良に取り組まなければならない。
日本の大学には、臨床腫瘍学の講座がほとんどない。そこで、二つの学会が、抗がん剤専門医の育成をしているのだが、日本専門医認定制機構の代表理事である酒井紀氏は(東京慈恵会医科大学名誉教授)、二つの学会が認定するのではなく、一本化してよりすぐれた専門医を認定することが、国民のためではないかと、呼びかけている。

このこともあってか、ここにきて抗がん剤治療水準向上のために、二つの学会が、日本医学会「高久史麿会長」の調停案を受け入れ、「がん治療医」を合同のカリキュラムで新設することになった。明日の医療のためにも患者の立場からも、当然のことである。(つづく)

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