医療過誤について。

なぜ医療過誤は起こるのか、実例を検証しながら考えるコラムです。

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2004/02/27

1.医療過誤(1)

〜こんなに医療過誤は起こっている〜

最近、とくに医療過誤の報道が多いようだが、過誤そのものは、その内容は異なるにせよ、昔から大なり小なりあった。患者側の医学知識の乏しさや医師側の専門性のなかで一般化されにくく、今日のように表面化しなかっただけである。
それにしても、J大附属病院での、前立腺がん摘出のため、腹腔鏡による医療過誤には驚いた。
このJ大の事件は、もはや医療過誤というものではなく、そこには医学もなく、もちろん医療行為でもなく、法的には業務上過失致死罪ということで起訴されるのだが、私に言わせれば、悪質な殺人事件で、業務上などというものではない。医師は医師になった時から、もう普通の人間ではない。社会は多くの専門的特権を与えたのである。その自覚はないのか。
もし、自分自身だったり、自分たちの父親だったり、知人であったら、このような前立腺がん摘出手術をうけたり、しただろうか、万一、実施したとしても早い時点で開腹手術へといち早く切り替え、至急ベテラン医師の応援をたのんだであろう。
まったく、動物実験そのものである。----いや、動物実験でもここまで技術的に残酷なことはしない。尊い生命体であることを彼等は頭から消去している。

医療過誤

〈患者様〉、最近、医師たちはこう呼ぶようになったが、ただそう呼ぶだけで患者不在の医療が、まだ続いているといえる。
医療過誤----なんともいやな響きのある言葉である。患者側からみれば納得したとしても、多くの疑問が残る。ケースによっては憎しみがたかまる。
医師の側からみれば、その内容にもよるが、良心を麻痺させないかぎり、なんともやりきれなく、ふと死を自覚する心の苦悩にもなる。
医療の世界、医療過誤は大なり小なり避けて通れないものである。法的な制裁を受けなくても、その責任は、重い荷を生涯にわたって背負うことになる。
医療過誤と一口に言っても、その内容は多種多様だ。なぜこんな単純なウッカリミスをしたのかというものから、なぜ、なぜ、そんなことをしたのかというものまで、実に多い。

実例をみる

よく検体ミスで不要な手術を実施したケースがある。

宇都宮市内にある社会保険病院での事件だが2001年1月、40代の男性患者から採取した検体に、他の末期がん患者の検体が混じるミスがあった。その結果、左肺の半分を摘出したというものだ。
この男性患者は手術後、約2週間後、縫合部分に穴が開く合併症を起こし、現在は脳梗塞で意識不明の状態が続いているという。(2003年10月15日現在)
医師は検体の混入ミスと合併症の因果関係はないという。
気管支内視鏡検査を実施、この男性患者から採取した検体の入った試験管に別の患者の検体が混入、細胞診断の結果、医師は男性の腫瘍を悪性と判断した。その結果、左肺の下半分(下葉)を摘出した。ところが術後の検査で、摘出した左肺下葉の病巣は結核性のものであり、悪性ではなく良性であることが分ったのである。不必要な外科治療をしたことになる。
もし、このような事態にならず、術後回復し、元気になって退院すれば、肺がんを手術によって克服したことになり、患者は医師に感謝していたことだろう。術後の合併症や意識不明----なんと大きな医学的な落し穴だったのか。
同じような事件は、10年くらい前だったか、国立T大学病院でもあった。これもがん検査の標本を取り違えてしまい、肺がんでない30代の男性の健康な肺、右肺三分の一を切除したのである。
このほか、患者の取り違い事件もあった。多分、大きく報道されたので、ご存知のことと思うが----Y市立病院やK市民病院などで起こっている。
過去の数多い医療過誤を思い出すと、ガーゼなど手術機材や器具の体内遺残事故。人工呼吸器にからむ事故。
たとえば、人工呼吸器が外れて無酸素性脳死で数か月後に死亡している。また麻酔の量を間違えて死亡。異型輸血による死亡。通常の三倍量の抗がん剤を投与して死亡。前立腺がん患者に通常量の8倍の抗がん剤をナースに指示し、ナースもこれに気づかず点滴して患者死亡。胃チューブから入る栄養剤をナースが誤って点滴用のチューブから投与し患者死亡。

最近の実例も多い

最近、2〜3か月間に報道されたものも多い。赤血球製剤の輸血を受けた直後に急死した事故。敗血症で死亡したのだが、病院は院内感染を否定している。死亡したのは解離性大動脈瘤の手術を受けた56歳の女性で、その後の調べで血液から緑膿菌が検出され、日赤の血液センターが疑われている。
また、一字違いの抗がん剤投与による死亡事故が報道された。
国立K大病院で起きたこの事故は、タキソールに、タキソテールを投与し、64歳の男性が死亡したというものである。
このタキソールもタキソテールも両剤とも肺がんや乳がんに使用される抗がん剤である。
タキソテールの強さは、タキソールの3.5倍あり、白血球の減少など人体への悪影響が大きいのだ。
また、浜松市の病院で、心筋梗塞でかつぎ込まれた66歳の男性患者に、抗不整脈剤を10倍の量も注射した事故もある。
抗不整脈剤のリドカインを成分とした静脈注射用の「リドクイック」を2度に分けて静注すべきところを、医師が指示を間違えて、キシロカインを----ナースは点滴用として使われている濃度10%のキシロカインを500ミリグラムずつ、2回静脈注射したという事故である。患者は、かなり重症で、病院に搬送されてきたとき、心停止があったときく。抗不整脈剤の投与量と方法が間違ったが、死因については、多くの議論があることだろう。
医療過誤の判定には、難しい点があるが、いわゆる医師をはじめナースなど医療従事者の不注意によるケアレス・ミスが多発している。
それと、その原因がはっきりしないものも少なくない。
私の知人が、前立腺肥大症で、内視鏡による摘出(切除術)を行ったが、出血が多く、輸血をしたのだが、術後B型肝炎が発症した。
私は医師とその原因究明をチェックしたのだが、結局のところ日赤から(血液センター)取り寄せて使った血液が、B型肝炎ウイルスに感染していたのではないかということになった。
日赤血液センターは、なんともいえないという。医師は患者に全てを話し、B型肝炎治療を----予定以上入院したが無事に退院した。病院側はただただ、謝罪をしたのである。
このように慢性疾患があり、手術をせねばならない時は、手術前に採血した自分自身の血液を、手術時に使う方法がいいのではないか。
最近は、自己血液を前もって採血し、検査をして保存して使うことが行われている。

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医療過誤事件は、今も昔と変らず起きている。どうしてなのか。

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