医療事故

医療事故は、医師の不勉強なのか、うっかりなのか?

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2004/02/27

2.医療過誤(2)

〜うっかりか不勉強か?〜

患者は、臨床の場で医師を信じて任すしかない。
警察庁のまとめだが、医療被害者あるいは医療機関が、警察に医療事故(異状死)を届け出た件数は、過去6年間で約9倍に増えている。昨年(平成14年度)では、183件にも上った。

医療過誤問題で最も大事なことは、再度、このような不幸な事件を起こさないという、医師の再教育とか医師免許の再考、病院システムの改革などを、きっちりと実践することである。
この点が私たち国民には見えてこない。この問題を、単に刑法第211条に基づく業務上過失致死傷ということで裁判を進め、罰金刑にするというのではなく、判決後、起訴された医師が、どうなっているのかということも、国民の立場からすれば知りたいところである。
また、この医療裁判についても、その多くが略式起訴命令で処分をすることが多い。(書類だけの審査で簡易裁判所で行う)この点についても、どうしてそうなのかを知りたい。


また、この刑事裁判とは別に、多くの民事裁判が、患者、あるいは遺族が原告となって進められている。なかには裁判の過程で具体的に過誤内容が分ってくることがあるが、被告である医師は意図的に殺意はないとしても、結果として殺人罪に問われるケースもあるようだ。
いわゆる医師としての常識と、患者や遺族の常識に大きなずれがある。
医師としての特権である免許を、再検討しなくてはいけない…そんな医師たちをみる。
多くの医療過誤事件で、医師自身が免許の取り消しを受けた例はほとんどない。この点も、国民の立場からみて、一つの疑問でもある。
では、さらに新聞報道等を参考にして、医療過誤の事例と問題点をみてみよう。

うっかりか、不勉強

平成15年11月、「左右の耳間違え切開」という見出しで、大学病院での医療過誤事件が報道された。驚きもあったが、また起きたかと心が痛んだ。
難聴の幼児に、人工内耳を埋め込む手術での出来事である。早目に気づいたので大事には至らなかった。
この幼児の手術の後にも、人工内耳の手術が予定されており、看護師がその患者と勘違いをして、左右の取り違いに気づかず、そのまま手術を始めてしまったという。
看護師の責任も重いが、手術を執刀する医師なども、まったくうっかりしたミスで、プロとして許される間違いではない。初歩の初歩である確認事項がなされなかったのだ。重大なプロとしての意識が欠落した事件である。
この種のミスは、世間では知られていないが、よくあることだ。
私の先輩だが、若い時に腎臓結核で、右の病的腎臓を摘出したが、このとき、手術室に入り消毒を開始したとき、病気ではない左の腎臓側の部位を消毒をした。当時は、今日の
ように麻酔もガス麻酔ではなく、当人がこの消毒に気づいて、執刀医に注意をして、難をのがれたのである。もし、この時、健康な腎臓を摘出されたら、今月、生きていなかっただろうと、彼は苦笑した。
このような事例は、過去にかなりあったが、閉鎖的な医療の世界では、闇から闇に葬られてしまった。当時(昭和20年〜30年代)、結核は不治の病でもあったことから表面化せず消されていってしまった。

手術中の事故は多い?

次によくあるのが、手術中に動脈損傷から死に至るケースだ。この11月にも報道された。
これは、K大附属病院で、肺がんの女性(63)の左肺を切除する手術の際に、動脈から大量出血し、出血壁が剥がれて、血液が正常に循環しなくなり、死亡したというものだ。
記者会見で、病院側は、手術中に過って動脈を切った可能性があると認めた。がんのある左肺を切除する手術で、手術後、肺を胸壁につないでいる靱帯を、電気メスで切る最中に大量出血した。止血処理でもなかなか出血は止まらなかったという。
やむを得ない事故か、それともミスなのかはっきりしない。しかし、この事態が生じたことを謝罪したいと責任者は、医療過誤を認めている。
外科手術中の事故には、その原因がはっきりしないものも多い。しかし、事故原因を徹底して究明し、今後の医療に生かすことが大事だ。

また、腰痛治療の一つである神経ブロック治療の過誤についても、日本腰痛学会で発表された。
ブロック治療とは痛みの元となっている神経の近くに麻酔薬を注射する治療法(神経ブロック)である。この治療で死者が出た。
日本腰痛学会では、ここ3年9か月に3人死亡。死亡のうち2人は注射を受けた後、全身マヒになったり、呼吸困難などを起こして死亡している。
もう一人は、注射器を体内に埋め込む方法の神経ブロックを受けた後、埋め込むための切り口から細菌に感染し、体内に毒素がまわる敗血症が原因の死亡である。
学会で発表した専門医は、麻酔する部位を誤ると全身マヒが起こる。しかし、早い段階で足を高く上げて心臓に血液がまわるようにし、気管内挿管で酸素を送るなどの処置をすれば後遺症は残さずにすむという。
敗血症で死亡した人のケースは、通常の埋め込み期間の3日を過ぎても注射器を取り出さなかったためとみられている。
また、両足がマヒした5人のうち3人は注射の仕方が悪かったことによるという。2人は注射に伴ってできた血腫(血のかたまり)が神経を圧迫してマヒにつながったとみているという。
ここで専門医は、とにかく簡単だと思い込んで、医師は安直に実施する傾向があり、このことを改めないかぎり事故は起こる----こう警告をしている。
この神経ブロックは、整形外科的治療だが、がんの痛みの緩和治療に対しても広く行われている。

カテーテル誤挿入事故も多い

カテーテル挿入だが、とくに中心静脈へのカテーテル挿入は、首の付け根に近い鎖骨付近の静脈から入れて、栄養剤や抗生剤を心臓近くの太い静脈へ直接点滴する方法である。
腕の血管に針を刺す点滴に比べ高濃度・高カロリーの点滴液を投与することができるので、手術後間も無く食事ができない患者に対して広く行われている。
カテーテルがきちんと入ったかどうかは挿入後に注射器に血液が逆流してくるのを見て確認をする。
さらに胸の撮影をして、カテーテルが血管に沿った力ーブを描いているかどうかで確認する方法がある。
・カテーテル事故の多くは、この確認がしっかり行われているかどうかである。
カテーテルの針が静脈を突き破って肺に達してしまうと、空気が溜る気胸が起こりやすい。また、点滴の輸液が胸の中に漏れ出したりすると、胸にこれら輸液が溜って肺を圧迫し、呼吸不能になるのだ。
やはり、注意が足りないといえる。
また、肺の病気の既応から、このカテーテル挿入が難かしい患者もいる。こうした点の確認や注意も大事だ。

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