生活習慣病

多くの日本人を悩ましている、生活習慣病の原因と予防方法について解説しています。

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2004/03/22

1.若年化する生活習慣病

〜かつては成人病と呼ばれた〜

生活習慣病のことを、以前は成人病と呼んでいた。 40代、50代と働き盛りの人々に多く発症するもので、脳血管障害(脳卒中)、虚血性心臓病(冠動脈硬化による狭心症・心筋梗塞など)、高血圧症、糖尿病、高脂血圧、悪性腫瘍(各種がん)などのことである。

これら成人病の発症が、今日、若年化している。 30代で増えているのだ。30代は人生の真っただなかであり、人生の結実を一歩一歩踏みしめて、その実現をはかる出発の年代でもある。

この最も重要な年代に健康を害することほど不幸なことはない。これら成人病は、その改善をはからねば、 60代、70代の老齢期は悲惨なものになるからだ。

丁氏は、 37歳の男性。職場の検診で、痛風発作寸前の高尿酸血症、高コレステロール血症、高血圧症、肥満が指摘された。

さっそく、日常生活、とくに食生活の点検を行い、アルコールをやめ、動物性脂肪摂取の制限をし、野菜を十分にとり、運動不足の解消をはかるなど大変な努力を行った。その結果、年齢も若かったために、代謝率も低下しておらず、見事、痛風発症を抑える尿酸値になり、体重も減量し、血圧値も正常になった。

ここで問題点となるのは、丁氏がまさか自分が成人病に罹患しているとは思っていなかったことだ。

丁氏の場合、 30代でも肥満があることから、職場の健診も40歳以上の人と同じ検査項目を実施した。

このような成人病健診は、大企業などでは実施しているが、中小企業ではここまで実施している所は少ない。とくに企業に属さない自由業や商店主、農業、漁業などに従事している人には、まだまだ成人病健診の実施率は低いことだ。

痛風がなぜ問題か

痛風は前にも述べたように血液中の尿酸値が異常に高くなることから発症する。壮年期の男性に多い。

尿酸は細胞の新陳代謝によってできた老廃物で、尿酸量の多いことが続くと、尿酸は結晶化して関節に沈着し、痛風関節炎を起こす。この関節炎は、足の親指の付け根から始まる。それも夜中に足の親指の付け根に焼けひばしを突き刺すような激痛が走る。 (痛風発作)

そして、患部は赤くはれ、熱をもつ。発作対応には特効薬があるが、厄介なのは腎臓障害である。その腎障害は、尿路結石を起こしたり、細菌感染による尿細管や腎糸球体の障害から、腎臓の大事な血管に病的な硬化症を起こし、動脈硬化を促進し、大事に至ることである。厄介な成人病である。

なぜ生活習慣病なのか。成人病が生活習慣にもとずく因子が大きく、この対策を国としてとったのが、昭和 26年であった。

感染症である結核に代わって脳血管障害 (とくに当時は脳出血)が死因のトップを占めたのである。

そして死因第 2位ががんで、なかでも当時は圧倒的に胃がんが多かった。第3位が、心臓病(狭心症、心筋梗塞)である。

そしてこれら死因上位を占める三大成人病の誘因は、日常生活、とくに食生活習慣が大きいことから、生活習慣病と呼ばれるようになったのである。

第一位の脳出血は、その誘因として高血圧があり、そこには遺伝素因があるとしても、塩分摂取量が、 1日15〜20グラムという多さである。当時欧米諸国の塩分摂取量は1日7〜8グラムであった。

ご飯を多く食べるために塩分の多い漬け物をとる一汁一菜の粗食に脳出血の大きな誘因があった。決して、今日のように、コレステロールや中性脂肪の多さではなかったのである。

このことは、脳出血多発地域 (東北地方など)の住民健診の実戦活動から、高血圧症対策第一をかかげ、徹底した食生活習慣の改善普及を行い、タンパク質や脂肪摂取量が増え、脳卒中(脳出血)は、激減したことからわかる。

当時、脳出血で倒れ、尊い生命を失ったり身体マヒに陥る人々は、働き盛りの 40代の男性が圧倒的に多かったのである。

そして昭和 40年以降、日本経済の伸展から、食生活も次第に欧米化して、以前とは異なる脳卒中、すなわち脳出血ではなく、脳梗塞が増えてきた。この背景には、高脂血症や糖尿病などが、高血圧とならんで重要な因子になったことがある。


今日も死因上位は変らず

昭和 33年では、脳出血、がん、心臓病といった慢性疾患が死因において上位を占めていた。

そして今日では、順位は変ったが、がん、心臓病、脳血管障害 (脳梗塞)で、これら三大成人病を合わせると死因の6割以上を占めている。

平成 11年度の患者調査を、資料からみると、医療機関を受診している総患者数は、高血圧性疾患719万人、糖尿病212万人、虚血性心疾患107万人、脳血管疾患147万人、悪性新生物(各種がん)127万人であり、合計すると1300万人以上になる。

医療費であるが、平成 12年度の国民医療費は、悪性新生物2兆913億円、高血圧性疾患1兆8527億円、脳血管疾患1兆7862億円、糖尿病1兆1155億円、虚血性心疾患7363億円となっており、これらを合計すると7兆5820億円に上り、これは一般診療医療費の32%も占めている。生活習慣病対策は、待ったなしの重要な課題である。

対策は各個人の努力が

今日の生活習慣病の発症をみていると、オーバーだというかも知れないが、食生活習慣については、幼時からその対策が必要ではないかと思う。

街には、高カロリー食品が溢れている。やはり、各人が正しい認識を持ち、いかに取捨選択をして、食生活の健康化をはかるかが大事である。

というのは、これら生活習慣病は年齢が上昇するに従って、その頻度が上昇する性質がある。人口の高齢化に従って、ますます増えることが予想される。すなわち、これら疾患が、たんに高齢者のみならず、若年化することだ。その事実が今、起きている。言葉をかえていえば、若い時から、昔、 40歳以上に多発する老齢期の病気が、もう成人病ではなく、国民病になってきているからだ。その現実が、今や起こっている。

いかにして健康的な生活習慣を実践するか、各人の努力が大事である。

そして、疾患の発症を予防する健診対策を推し進めるためにも、国も個人も努力せねばならない。

実践のポイント例

食生活改善が第一だ。高脂肪・高タンパク質の欧米型食生活を日本食に近づけることだ。

通風予防〜ビール、枝豆、モツの煮込み、焼き鳥などはプリン体の摂取量を増やして、通風発作を引き起こす。

ビールは精々中ジョッキ一杯にして、他のアルコールに変え、肉、魚、モツを減らして野菜を増やすことだ。

そして、最低でも一日 40分程度は歩くことだ。運動不足の解消である。

とにかく一つ一つの具体的な実践が生活習慣病対策になる。

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