12のポイント

アスリートが食事を摂る時に注意するポイントをまとめてみました。

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2002/11/01

11.スポーツ選手のための栄養プログラム(8)

〜食事摂取のポイント〜

1.食事は1日4〜5回に分けてとる

減量中、増量中に関わらずこの原則は変わりません。減量中のトレーニングを効果的に行うためには、低血糖状態をいかにして避けるかということが大切であり、そのためからだの直接のエネルギー源となるブドウ糖をコンスタントに補給することが重要です。増量中は必要なエネルギーを1日3食でまかなうことは到底できません。

 私たちの体にはカロリーの消費と供給の間に密接な関係があります。毎日のトレーニングが非常に激しいものである場合、食欲だけに頼っていては必要なカロリー摂取は不可能です。

激しいトレーニングをしているスポーツ選手にとって、食事のベースとなるのは炭水化物であり、それもなるべく精製の度合いが低いものが薦められます。したがって、玄米、小麦全粒粉のパスタ、野菜、イモなどを組み合わせて主食を考えるべきです。精製されすぎたものや、特に砂糖を大量にとると一時的に血糖値が上がり元気が出ますが、その後に疲労感、倦怠感などの低血糖症状が現れ、また、正常な食欲の邪魔をするため、必要な栄養素が供給できなくなります。

2.脂肪の少ないたんぱく質を選ぶ

動物性たんぱく質はアミノ酸バランスに優れ、スポーツ選手にとって重要な食品であることには間違いありませんが、高脂肪のものが多いのでそのとり方には注意が必要です。体についた余分な脂肪は、スポーツ選手にとって即、パフォーマンスの低下をもたらします。また、たんぱく質をとる場合は体内での分解、他のアミノ酸の再合成などを円滑にし、たんぱく質の利用効率を高めるためアミノ酸バランスの良い食べ方をすることが必要です。そのためには動物性たんぱく質を2 / 3、植物性たんぱく質を1 / 3の割合を基本とします。

減量中は特に低脂肪のモモ肉やヒレ肉、鶏のササミなど肉の部位に注意してとる必要があります。また、魚介類はアミノ酸バランスに優れ、かつ体に有益な脂肪を含んでいますから、新鮮なものを選んで食事に取りいれます。ただし魚油や植物製油は過酸化物質を生じやすいので、酸化を防ぐビタミンEと一緒にとる必要があります。

3.海草、ゴマ、ロースとしていないナッツ

スポーツ選手は激しいトレーニングで大量のミネラルを消費しています。また、ビタミンはミネラルの助けなしには吸収されることも機能を果たすこともできないといわれています。海草、ゴマ、ローストしていないナッツ類は自然の食品として理想的な配分で各種ミネラルが含まれていますから、ミネラルの供給源として意識的に食事に取りいれます。岩塩なども最近脚光を浴びるようになってきましたが、これもミネラルの供給源として非常に優れているからです。

普段の食事の中にこうしたミネラルの供給源を取りいれるというちょっとした気配りで、ミネラルの不足状態が改善されるのです。

4.牛乳と卵が基本

両方とも脂肪の多い食品ですから、減量時には低脂肪のものを選んだり、黄身よりも卵白を多く食べるといった工夫が必要です。しかし、なんといっても安価で手軽でアミノ酸バランスに優れた食品であり、牛乳はカルシウム源としても重要です。

ひとり暮らしのスポーツ選手にとって、食事の調理に時間もお金もかけられない場合は、牛乳と卵をベースのたんぱく質源として必ずとります。ただし、脂肪の占める割合が高くなりますので炭水化物を同時にとる必要があります。

5.野菜を大皿に2〜3皿とる

野菜をきちんと食べることが複合炭水化物、繊維、ビタミン、ミネラルの優れた供給源となり、減量時はもちろん、体のコンディショニングのためにも是非とも必要です。ビタミン、ミネラルの供給源としては冷蔵庫に長い間おいた野菜には効果は期待できません。新鮮なものを手早く調理して食べることです。冷凍野菜を上手に取りいれることも有効です。電子レンジを使った調理は大切な栄養素の損失が少なくて済み、茹でるときも少量ずつ短時間で茹で上げるようにすることです。

野菜料理を取りいれることは栄養素のバランスが改善されることはもちろん、血糖値の急激な上昇を抑え、脂肪のつきにくいからだづくりに役立ちます。サラダだけにとどまらず、茹でたり、煮たり、いためたりして、特に緑黄色野菜をとることが必要です。

6.加工食品、調味料を減らす

かまぼこやちくわなどの魚の練り物やベーコン、ハムなど加工した食品の中には食品添加物、着色料や過度のナトリウムなどが含まれています。手軽にとれる食品ですがこれに頼りすぎるとビタミン、ミネラルの不足やアンバランスを招きます。

同様に料理にソース、醤油、ケチャップ、ドレッシングなどをかけることが習慣になっている場合は、それを改めなければなりません。たとえばケチャップには多量の砂糖が入っていますし、醤油などのとりすぎはナトリウムの過剰摂取につながります。

インスタント食品、レトルト食品、ファースト・フードなども手軽さとその味に慣れてしまい、多用するケースが多くなりがちですが、そうしたものを中心とした食事は確実に栄養素の不足をもたらします。

加工食品や調味料の使いすぎに気をつけ、自然の食物をきちんと食べていさえすれば、必要な栄養素は補給され、体もそれを吸収しやすくなっているのです。

7.果物を1日2個はとる

果物の糖分は果糖ですが、これは血糖値を下げるインシュリンの分泌を促す効力が非常に弱いため、糖分をとりすぎた後のショック症状的な低血糖症状は起きません。カロリーも低く、カリウムのすばらしい供給源でもあります。トレーニングの直後に天然100%のジュースを飲めば疲労回復を早めてくれます。

食事調査からも果物の不足が顕著ですが、1日4〜5回食を実行するときも果物を間食に取りいれれば、その不足を簡単に補うことができます。減量時には甘いものへの欲求が非常に強くなりますが、そういう時こそ果物をとる習慣を身につけることです。

8.ワン・パターンの食事をしない

必要な栄養素を確保するために毎日基本となる食品をとることは大切ですが、カロリー計算を重視したメニューに頼りすぎると、毎日同じ食品ばかりをとり続けることになり、栄養素のバランスが大きく崩れてしまいます。

特に減量時はカロリー制限にこだわりすぎるあまり、食品の種類、メニューが非常に乏しくなり、ビタミン、ミネラル不足に陥りやすく、そのため代謝が落ちて減量がうまくいかないばかりか、体調を崩す大きな原因となります。

また、激しいトレーニングを続けるスポーツ選手にとって、食事は単に栄養素を補給するというだけでなく、楽しみの一つでもあり、緊張をほぐす役割も果たしています。バラエティに富んだバランスのとれた食事を、ゆったりとした気分で美味しく楽しんで食べることが、栄養素を無駄なく体に吸収するために必要です。

9.食事のタイミングに気を配る

競技種目によってエネルギー代謝の過程が異なるため、トレーニングの効率を上げるためには目的にあった栄養補給が大切であり、練習時と競技時でも食事のとり方は異なってきます。

トレーニング時の栄養補給のポイントは、トレーニングを効率よく実施するための確実なエネルギー補給と、トレーニング後の疲労回復を早め、基本的な体づくりに必要な栄養素の確保です。朝食には炭水化物を必ずとり、トレーニング直後には糖質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルに富んだ間食をとる必要があります。特に食欲が低下する夏は食事の回数を増やしたり、調理方法を工夫して、必要な栄養素を確実に体に供給する要注意が必要です。

競技時においては、競技前日と競技当日の栄養補給の際に、どのように炭水化物を摂取するかがポイントとなります。炭水化物の比率を普段よりも増やし、特に競技前の食事ではおにぎり、もちなどをベースとした消化の良い炭水化物をとることです。

10.PFC比を常に意識する

カロリーだけにこだわりすぎていると、特に減量時に総摂取カロリーが低下する分、脂肪が占める割合が高くなります。また、増量のためにやみくもに動物性たんぱく質をとりすぎた場合も脂肪の比率が上がり、炭水化物の比率が下がります。

先に述べたようにこの3つの栄養素はバランスがとれてこそ効率の良い働きをしてくれます。競技種目によって若干の差は生じますが、たんぱく質20%、脂肪20%、炭水化物60%のカロリー比を基準にします。特に脂肪には注意が必要で、食品毎の脂肪の占める割合をチェックする必要があります。

11.水分補給の注意点

激しいスポーツを安全に効率よく行うためには水分の補給が重要なポイントです。特に夏期のトレーニングで発汗量が非常に激しく、水分をとっているにも関わらず練習後の体重が2〜3kg減る場合がありますが、これはのどの渇きによって水分を補給するのでは十分な補給ができないことと、体内のイオン濃度を一定に保つために自発的な脱水が起こっているためといえます。

夏期トレーニングでそれが長時間にわたる場合は、水分中に0.2〜0.5%の塩分を含むものを用意し、トレーニング前に250〜500ccを補給し、トレーニング中は100〜200ccをこまめに補給します。ドリンクを冷たくしておくと飲むだけで体を冷やす効果があり、水分の吸収も早くなります。

運動中の水分とエネルギー補給のために炭水化物飲料がよく用いられています。炭水化物飲料に含まれる適量のブドウ糖はナトリウムの吸収を促進するため、それに続いて水分も吸収されます。

炭水化物飲料を選ぶときは吸収時間等を考え、5%程度の濃度のものを選ぶようにし、含有糖分の割合を確かめて濃すぎる場合は水で薄めて使用します。エネルギーを素早く供給しながら、急激な血糖値の上昇も避けられます。

運動前の水分補給には5%濃度の炭水化物飲料を、運動中の水分補給には炭水化物飲料とただの水を組み合わせ、運動後には少し濃度が高めでビタミン、ミネラルを含んだ炭水化物飲料か100%天然のジュースをとるようにします。

12.サプリメント

スポーツ選手にとって食事は体をつくり、トレーニング効率を上げ、けがを防ぐためにも大変重要なファクターです。しかし、彼らのエネルギー代謝、トレーニング強度、ストレスを考えた場合、通常の食事ではビタミン、ミネラルがまかないきれないという事実があります。

ビタミン、ミネラルは天然の形でとることでリスクが少なく、吸収効率も高まり、またマルチ・ビタミン、マルチ・ミネラルの形でとることで相乗効果をもたらします。疲労感、けがを減らし、集中力を高め、パフォーマンスを上げるためにビタミン、ミネラルのサプリメントは不可欠です。

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